INSAMシンポジウム 2005
「群れのダイナミクス--自己駆動、協調、機能」

講演要旨



1.菅原研  東北学院大学教養学部情報科学科

講演タイトル:単純な動力学特性を持つ群れのモデルと群ロボットシステム

要旨:
 ロボティクスの分野では、複数のロボットが協調して仕事を行うマルチ
 ロボットシステム、群知能ロボットシステムの研究が活発に進められて
 いる。その方法論のひとつとして、生物の群れ行動からヒントを得るこ
 とが考えられるが、ここでは魚や鳥の群れをモチーフとした群ロボット
 システムについて、その動力学モデルや実際のロボットシステムへの実
 装などについて述べる。



2.西森拓 広島大学大学院理学研究科

講演タイトル:蟻の集団採餌と非一様性

要旨:
 蟻、蜂など集団によって行動する昆虫には、全体を俯瞰し統合するリー
 ダーは存在しないが、あたかもリーダーがいるがごとく集団として高度
 なタスクを実行することができる。我々は、蟻集団の行動を基に簡単な
 数理模型を構成し、採餌行動を再現するとともに、構成要素(蟻)の非一
 様性が集団としてのタスク実行の効率が増すことを示す。(ここでいう
 非一様性とは、かしこいリーダーを入れるではなく、むしろ、ノイジー
 な要素を集団中に混入するということである)さらに、上記の結果が、
 蟻以外の集団の動力学一般とどのような関係にあるかを、いくつかの事
 例と対応させながら考察をすすめる。



3.水口毅 大阪府立大学大学院工学研究科

講演タイトル:自律分業システムと制御

要旨:
 アリやハチなどの社会性昆虫は ``polyethism'' と呼ばれる分業システ
 ムを組織しており、構成する個体を幼虫の世話・巣のメンテナンス・食
 物採取などいくつかのタスクに適当な比率で分配させていると考えられ
 ている。最近の研究では個体の多様性が環境変動に対するコロニー全体
 の適応性を高めているという報告もあるが、群れ全体の状態とその変化
 を各個体がとらえるメカニズムには未解明の部分が多く残されている。
 本研究ではこれらの現象を踏まえ、環境変化への自律的な適応するよう
 なシステムの実現を目指し、状態間個体数比が制御可能な分業システム
 を提案すること、また、異なるモデル同士の性能比較のための基本的な
 特徴付けを試みる。



4.秋野順治 農業生物資源研究所

講演タイトル:アリはどのようにして餌情報を仲間に伝えるのか?
             採餌探索における集団行動

要旨:
 アリは、女王を中心に、その娘であるワーカーとからなるコロニーを単
 位として社会生活を営なむ真社会性昆虫である。コロニーを維持するた
 めに採餌活動や育児も含めて様々な作業を請け負うワーカーは、コロニ
 ー内において、主として化学物質(フェロ モン)を介して互いにコミュ
 ニケーションをとりあっている。その情報伝達の様子は採餌活動におい
 て顕著に見受けられる。ここでは、集団動員を行う2種のアリ:クロク
 サアリとトビイロケアリを対象とし、餌探索とそれに引き続いて起こる
 コロニー仲間の動員に注目し、いくつかの観察例をもとに採餌集団内に
 おける情報伝達について考察する。



5.西成活裕 東京大学大学院工学研究科

講演タイトル:自己駆動粒子系としての群れと渋滞

要旨:
 車や人々、さらには蟻などの生物集団は、自ら動くことのできる自己駆
 動型の物体でありニュートンの運動の法則を満たさない。このような群
 れの集団運動を非平衡統計力学的対象として考える研究がここ10年で
 飛躍的に進展してきた。講演ではルールベースの離散モデルによりこれ
 らの群れの運動と渋滞形成の特徴について議論し、さらにいくつかの実
 験結果も紹介する。